戦国武将は優れた文化人でもありました。
辞世の句は、その武将の生き方、死に様を私たちに伝えてくれます。
明智光秀
順逆に二門なく 大道は心源に徹す
五十五年の夢 覚め来たれば一元に帰す
朝倉義景
七顛八倒 四十年中 無自無他 四大本空
井伊直政
生死の事大 無常は迅速なり
石田三成
筑摩江や芦間に灯すかがり火と
ともに消えゆく我が身なりけり
上杉謙信
極楽も地獄も先は有明の 月ぞ心に掛る雲なき
大内義隆
打つ人も打たるる人も諸ともに
如露亦如電応作如是観
太田道灌
かかる時さこそ命の惜しからめ
かねて無き身と思ひ知らずば
大谷吉継
契りあればむつのちまたに待てしばし
おくれ先だつたがひ有りとも
蒲生氏郷
限りあれば吹かなど花は散るものを
心短き春の山風
神戸信孝
むかしより王をうつみのうらなれば
むくいをまてや羽柴筑前
黒田孝高
おもひおく言の葉なくてつひに行く
道はまよはじなるにまかせて
斉藤道三
捨ててだにこの世のほかはなき物を
いづくかついのすみかなりけん
斎藤利三
消えてゆく露のいのちは短夜の
あすをも待たず日の岡の峰
佐久間盛政
世の中を廻りも果てぬ小車は
火宅の門を出づるなりけり
柴田勝家
夏の夜の夢路はかなきあとの名を
雲井にあげよ山ほととぎす
島津忠良
急ぐなよまた留るなわが心
定まる風の吹かぬ限りは
島津義弘
春秋の花も紅葉もとどまらず
人も空しき関路なりけり
清水宗治
浮世をば今こそ渡れ武士の
名を高松の苔にのこして
陶晴賢
何を惜しみ何を恨みん元よりも
この有様の定まれる身に
高橋鎮種
屍をば岩屋の苔に埋みてぞ
雲井の空に名をとどむべき
武田勝頼
朧なる月もほのかにくもかすみ
晴れて行くへの西の山の端
武田信玄
大ていは地に任せて肌骨好し
紅粉を塗らず 自ら風流
伊達政宗
曇りなき心の月を先だてて
浮世の闇を照してぞ行く
豊臣秀吉
つゆとをちつゆときへにしわがみかな
難波の事もゆめの又ゆめ
鳥居強右衛門
わが君の命にかわる玉の緒を
何いとひけん武士の道
平塚為広
君がためすつる命は惜しからじ
つひにとまらぬ浮世と思へば
別所長治
いまはただ恨みも有らず諸人の
命に代はる我身と思へば
北条氏政
雨雲のおほへる月も胸の霧も
はらひにけりな秋の夕風
三浦道寸
打つ者も討たれる者も土器(かわらけ)よ
砕けてあとはもとの土くれ
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